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ぱむたべたい

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 東京百物語 天・地・人の巻

『東京百物語』 天・地・人の巻    種村 季弘 編



独文学者、評論家でありつつ、日本文学にも精通していた、故種村季弘(敬称略)によって編集されたアンソロジー。
戦前戦後、激動の昭和を、東京の空の下、力強く懸命に生きた人々の日常を描いたエッセイ(短編小説)集だ。

列挙されている作家は、種村自身も含め、三島由紀夫、大西信行、桂文楽、山田風太郎、坂口安吾、古今亭志ん生、等、文豪と呼ばれる文人が名を連ねる。

本書は、天、地、人の3編に別れており、小項目として、<食べ物><職人・商人><怪人・奇人>などのテーマが割り当てられている。
それは空襲前夜の民衆の様子だったり、戦後まもない復興に携わる商人、職人、ストリップ劇場。等々。
人々の生活を、一人称から三人称、ときに著者の論文のように、様々な角度から描かれている。

一般的な小説のような一貫した物語というものは、感情移入しやすく、心揺さぶられる感動があるが、本書は、アンソロジー形式にすることで、世界をより広く視界に捉える事ができるよう編纂されている。
物語を読み進めるにつれて、そのひとつひとつの街や人の情景が、まるでパズルのように頭の中で組み上がり、当時の東京が完成に近づいていく感覚になる。

私が幼いころ、軍人だった祖父から聞いた戦争。
その英雄譚の登場人物が語るような口調に、それはそれは胸を高鳴らせ、何度もねだり、聞き入ったものだ。
その影響か、当時から長い間、戦争というものについて現実感がなかった。(当たり前なのだが)
それは、映画やマンガのような文学的表現の一部のようなニュアンスのまま、私の頭の中にこびり付いてしまっていた偏見だった。

この作品に出会うまでは。

天地人、隅々まで見渡して観えたのは
人々が、生まれ、歩き、働き、食べ、笑い、泣き、死んでいく。
そして、それでも立ち上がっていく東京。

形は違えど、今も昔も、何かにあがいて、懸命に生きる人々。
読後、頭の中のその景色が、眩しくて寝付けず、閉じた目の中がちかちかした。

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